2016-12-12 14:00 追記
結露について追記しました。あくまで民間療法ですので、くれぐれもご注意ください…。
GearVRはすさまじい問題を抱えています。
- 最悪、起動後1分で落ちる熱問題
- 10分で15%消費するバッテリー
これをイベントで大量のひとに安定して体験してもらうには、大変な労力とカネがかかってしまいます。それを解決した話をしますね!
Galaxyを1000台用意して、オペレーターを1000人雇えれば、根本的に解決できるが…
1000台もあれば、体験で1回使ったら、そのまま捨てるという富豪運用ができます。バッテリーは完全解決で、熱問題もある程度の対策ですみます。1台につきスタッフ一人をわり当てれば、1000台での運用もできるでしょう。
しかし、ここでは現実的な解である「十数台のGalaxyで運用する」にはどうすればいいかを考えましょう。
以下、課題と解決法です。
[課題] 最悪、起動後1分で落ちる熱問題。バッテリー温度が32度を超えると落ちる可能性が高くなる
- 端末が熱を持つとエラー画面になり、操作不能に。
- 全天球4k動画を見ていると、1分でオーバーヒートでエラー画面になる場合がある。
- バッテリー温度が32度を超えるとエラー画面になりやすい。
- 熱を持つとFPSが30まで下がり、4k動画の再生も不安定になっていく
[解決策] 熱さまシート + 保冷剤でキンキンに冷やしてから使う
熱さまシートとブロック型の保冷剤をいくつも用意して、“あらかじめ端末を冷やしておく”という対応をしました。
熱さまシートはニオイがある。子ども用だと多少ニオイがすくない。
ブロック型の保冷剤はカチコチにしておくと1時間程度は冷却効果が持ちます。
温度を16度以下まで冷やすと3体験ぶん、回せる可能性がある
今回の施策は、1回の体験が7分程度。
以下、室温26℃、風なしで行ったときの平均的な温度上昇。
タイミング | 温度 |
---|---|
開始前 | 16度 |
1回目終了時 | 22度 |
2回目終了時 | 26度 |
3回目終了時 | 29度 |
端末の温度上昇には体験者自身の体温も影響します。なので、夏はヤバい…。
あと、あまりに冷やしすぎると結露する可能性があがるので、お気をつけください。
冷却ジェルシートは「熱さまシート」が最強
- 熱さまシート > 冷えピタ > > > プライベートブランドな安いやつ
- 冷えピタには、冷え冷え能力以外にも「張り付き能力」というパラメータもある。
冷却ジェルシートの比較記事が参考になる。
熱さまシートが最優秀!冷却ジェルシート比較
イベント会場の冷房をガンガンきかす or 風通しをよくしておく
熱さまシートの冷却は気化熱。なので、
- 湿度が低いとより気化する
- 風があたるとより気化する
- 風通しのよい会場にする
- 扇風機の風を当てる
などをしておくとより長く冷却状態を保てるようになります。
また、単純にイベント会場の冷房をガンガンにしておくこともかなり有効です。冷房を18度に設定した状態だと温度上昇を75%まで減らせたりします。
最終的なオペレーション構成
- 粗熱をとる
- いきなり保冷剤で冷やすと結露する可能性があるので、扇風機で冷やしておく
- 保冷剤で冷やす
- 保冷バッグの中にでかい保冷剤 ✕ 2
- 保冷剤の間にGalaxyを挿しこむ
- 熱さまシートは毎回貼り直す
- 貼り終えたものは冷蔵庫で冷やし、次回の入れ替え時に使う
- 熱さまシートは冷凍より冷蔵のほうが効果が高いとのこと。
- 戦国時代の鉄砲隊のように、
- 「冷やし + 充電」グループ
- 「体験」グループ
- を分けて運用する
これで安定して冷やしつつも、充電することができました。
Galaxyの温度とバッテリー残量を監視する
Galaxyの温度とバッテリー残量を管理画面で監視するようにしていました。
これで「あと何回、回せるか」を把握して安全に運用できました。
UnityからAndroidの
- バッテリー温度
- バッテリー残量
を監視するネイティブのやつを作ったのでこちらに置いています。
katapad/UnityAndroidDeviceStatus
この値をUDPやSocket.ioで管理画面に送りつけていました。
[巷で見られる解決策] ファンをとりつける
CPU/GPU用のファンをGalaxyに直接とりつける、といったマッチョな解決策もあります。
ただ、これだけではさほど効果が得られない場合もあります。
我々が試した実験では「熱さまシート+ファン」だと、Galaxyの電池が切れるまで26度前後を保つ、という最高の結果が得られました。
しかし、体験者はHMDを手で触ることは多々あります。剥き出しのファンに手が当たるとたいへん危険です。
こうして我々はGearVRを1000人単位で安定した体験をしてもらえました
VR酔いと同じように、モバイルVRの熱問題は気をつけたいところであります。
とはいえ、オペレーションコストが増加してしまうところでもあり、大変悩ましい問題です。
我々のチームメンバーが とある有料GearVRアトラクションを体験したところ、2分で落ちたそうです…。お金払って落ちるって、おーこわ事案ですね。
これからモバイルVRでなんかやるひとはお気をつけください…。
あと、結露にもお気をつけください…。
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